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オンケン箱
2001.10.25






オンケンを知っていればすぐ分かるオンケン独特なシンプルなデザイン、シックな塗装、 そして角型ダクト。業務用の箱をイメージしてしまう面持ちの 多少そっけないデザイン。。

特に、エンクロージャーの両サイド、それも上から下までを使った大きなバスレフダクトを 持つウルトラバスレフと呼ばれるあの有名な箱には、何故か、昔から、、 不思議とひかれものがありました。その箱の実物を拝聴する機会が持てましたので、 寸法を実測させて頂いて、その設計の方向性を探ってみました。

外形寸法:W79.5cm×H93.3cm×D55.3cm  板厚 24mm
ダクト開口W5(4.9)cm×D40.3cm×H82.4cm×2個
板厚を除いた内容積は約333リットルで、ここから ダクト部を除いた実質内容積は約280リットルですが、 補強残を考えると若干の目減りがあります。しかし、このダクト部分の構造がすでに 補強桟の役目を果たしていますので、普通の箱に比べるととても少ない様です。 あって、5リットル位の様です。これで約275リットルとなります。

ダクト部分は上から下まで全面開口ではなく、途中に二箇所、補強板が入って分割されています。 上部と下部の寸法の高さは26.7cmと同じで、中間は29cmとなっています。合わせて82.4cmダクト幅は 実測4.9cmくらいですが、図面上では5cmの様です。実測したといっても誤差がありますので、 ここでは計算が若干容易になりますので、5cmとして計算しています。ダクト面積は左右合わせて、 824cm2となり、かなり大きな開口面積といえます。

オンケンでは、アルティックの416-Aや416-8A、8Bを推奨している様ですが、 残念ながら手元にデータがありません。 性格は違いますが、ここでは515Cのデータを元に計算してみます。

515C
口径       38cm
インピーダンス  16オーム
ボイスコイル径  7.62cm
fo        25Hz
mo        62g
Qo        0.18
周波数帯域    20〜1000Hz
最大入力     75W
出力音圧レベル  104dB/W
クロスオーバー  500Hz以下
磁束密度     14750ガウス
バッフル開口径  35.9cm
寸法       40.6パイ×D20.5cm
重量       12.4kg
これらから計算してみますと、下記の数字がでてきます。
  容量(リットル)  Qoc   foc(Hz) foc×0.7     γ
    275      0.33   45.38    31.8     2.29
ダクト面積824cm2=振動板面積の100%
dl:ダクト長(cm)  40.3
fd:共振周波数(Hz) 37.55
fd/foc        0.824
β          1.02

  

ところで、ダクト面積の824cm2という、この数字を見て、ピンッ!とくる人がいたとしたら、 15インチのウーファーを使って散々計算した人だと思います。 15インチクラスの有効振動版面積を計算するときの代表的な半径は16cmで、 これで計算すると約803cm2が有効面積になります。この半径は、ユニットにより違いがありますが、 16cmというのは少なく見積もってという数字で824cm2というのは、 半径を16.2cmとして計算した場合の有効面積と一致します。 これからしても、ダクト開口面積を、振動版の有効振動版面積と一致させたとみて間違いありません。 (このことから、ここでは、ユニットの有効半径を16.2cmとして計算しています。) このダクト開口面積を、振動版の有効振動版面積と一致させるというのは、理想バスレフで、 言われる言葉ですが、普通に円形ダクトや角型ダクトで考えると、 15インチクラスのユニットを使用する場合とんでもなく大きな穴が開きますし、 適度なダクト共振周波数にしようとすると、長大な長さになり、 内容積の目減りもバカにならなりません。さらに、デザイン面からみても纏めにくく、 こういう設計の物は、なかなかみられません。これからしても、この箱はとても巧妙な設計といえます。

β値も1.02となり、誤差の範囲ですので、1を目指したものであると思われます。 このβ値は、ダクト内の空気の質量とユニットの質量の比ですので、これを1にしようとしたのならば、 同じ重さを目指したいうことです。この箱の指定ウーファーは、416Aの様ですが、 これらのことから、設計上のウーファーは515Cであった可能性もありそうです。

γの値からすると、もっと大きな箱容量を求めたくもなりますが、バスレフとすれば、 まあまあなセンです。この内容積に515Cユニットを入れますと、ユニットのfo=25Hzが、 箱の容積によって上がりfoc=45.4Hzになりますが、これと、ダクトのチューニング周波数=37.5Hzを 比べてみても、約82%の設定となっていますので、無理がありません。 ユニットと同じ開口面積を持つダクトサイズでこの数値をクリアするのは、 全体の数値を念頭において考え尽くした計算となり、とても難しく、 ぼくには思いつきもしませんでした。 これは「コロンブスの卵」的な柔軟な発想で全てのつじつまを合わせてあるのを知ると、 頭が下がります。

まとめてみますと、まず、ユニットの有効面積と同じダクト面積を設定し、 ユニットの質量に合わせた数値になる様に、ダクト内の空気の質量を設定しつつ、 ダクトのチューニング値を適切なものになるようにダクト長は当然の事ながら、 内容積を決定して、デザイン面からも強度面からも合理的な設計がされている、 とういう事になります。

416のデータを教えて頂けましたので、これでも計算してみます。
fo        25Hz
mo        55g
Qo        0.24
  容量(リットル)  Qoc   foc(Hz) foc×0.7     γ
    275      0.45   47.34    33.1     2.59
ダクト面積824cm2=振動板面積の100%
dl:ダクト長(cm)  40.3
fd:共振周波数(Hz) 37.55
fd/foc        0.824
β          1.15
となります。

β値が、515よりも少し大きくなるのが個人的には気になりますが、これは十分所要範囲。
また、515と比べると、416はQoが高めでバスレフ向きですので、やはりこれも具合が良さそうです。





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