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はじめに
自分が自らのために作った巨大なスピーカーは、自分自身を現わす鏡のようで。。。少し気恥ずかしい。このスピーカーを考え始めてから、形に成るまでに早いもので 4年の月日が経ってしまいました。
人からは、じっくりと考えるタイプに見られがち ですが、本当は違います。根は感覚の人なんです。
見た目で良しとするデッサンは 早くから出来ていました。それでも、自分以外の人が見れば、似たような絵を 何枚も描き続けました。作る物のサイズが大きいがゆえに、簡単には 実行に移せませんでした。 ちょっと気にいらないからといって 2回、3回と作り直すのは色々な意味で不可能、 そう感じていました。
形が出来た後で、その予感は間違いなかったと実感しました。 もう1度作る気力は湧きそうにありません。 1度経験した辛さは、知っているだけに、2度めはさらに長く辛いものです。
このスピーカーは、現在使用しているスピーカーです。
かつてはと言えば、ジャンクで見つけた、もっと小さな箱に同じユニットを入れていました。
まともにスピーカーを買った事はありません。スピーカーの工作も実は、これが初めてです。
このHPに所々に散りばめた写真を見て正確に大きさをイメージできる人が、希であることは 実際にこのスピーカーを見た人の反応を見れば明らかなのですが、、とても大きいです。
いきなりこのサイズのスピーカーを作るのは、無謀です。
概念Concept
感動の音。。。
一生涯わくわくして使えるものが欲しい。 長く使い続けられる物にはニュートラルな線は決して外せない。 多少とも奇を衒ったものは、必ず、いつか、飽きる。
なるべく客観的にと気をつけても、少なからず個性が入ってしまうのは免れない。 ならば、本当に自分の欲しているものは何なのか、せめて考えの中では妥協を排した所から初めよう。 厳密に考えれば、妥協無しで事を行えるなんて稀な事である。 自分が何をどの程度とるか、一つずつ折り合いをつけながら、現実の形にしていこう。 ここで作ろうとしているスピーカは、実在の数あるスピーカの中で、 ジャズ喫茶ベイシーの音を一つの理想とするもので、ベイシーの音を聞いて、 無感動の人であれば、まったく無意味な物である。
ゆるい低音。緩く地を這うように漂う。 自然に漂いながら、止まるときは、ぱっと反応して止まる。
溜めのある音。バスドラムの音色と速さ。連打。ビッグシングルの排気音。 あの低音の歯切れの良さについていけるウーファー。さらに、十分な厚み。 充分に大きいエンクロジャー。15inc.ウーファーを最低2発。できれば4発。 必然的に大きくなる。
好きなスピーカーJBL K2 S9500。
スコーカを耳の高さに合わせる。 ベイシーの場合、これとは違い、ずっと高い位置にある様だが、 ホーンの作り、使用用途が違うからである。
密閉かバスレフか。現在使用中(注;1993年末)の箱はダクト穴は 後ろにあけてあるが、低音の入っている曲の時、後ろに行くとすさまじい音圧。 ウーファーの前は案外小さな音。スピーカから離れると両者が混ざった様な音。 バスレフの場合、共鳴による低域の出力増強を狙うのならば前面に ダクトがあったほうが良い。さてその面積は?
こうして書き連ねると、作るなら大箱ということになる。 K2の様に創るという事はコンパクトで形状が美しいという点では良いのだが、 音の点では、デメリットも多い 。とはいっても、大きなエンクロージャーを作っても、案外小さいものと 同じ程度の 音なのでは、という心配は付きまとう。現状のたった170リットルの箱でも 、無理やり押し込んだ2発の15インチウーファーで、結構な音が出るようになっている。 この箱で合う1発よりも、無理やりの2発をぼくは選んだ。 でも、今と同じ容量ではさすがに小さい。K2 S9500の様に47リットルしかない 箱に、高能率の14インチユニットをいれて評論家が責めないのはやはり、 作ったのがJBLだからであり、個人が作って絶賛はありえない。
ダイナミックラジエーションタイプのスピーカユニットが主流である間は、 そのまま高い水準でいられるもの。全く違った方式で音が出ない限り変える必要のないもの。 出来れば、「いつまで、使いつづけるの。」と人に尋ねられた時、「ずっとだよ。」 と答えられる物にしたい。
出費を考えると失敗は出来ない。
繊細に、でも大胆に。
出来るだけ美しいものを。密閉でもある程度の効果が望めるだけの容量を確保してみたい、、というのは、理想ですが、 現実を見つめて、バランスの取れたバスレフ箱を目指します。ダクト穴を開ける前に密閉も試しますが、 最終的には、バスレフの効果を出来る限り引き出したいというのが望みです。
使用ユニット
15インチ(38cm)ユニットのTAD1601bとJBL2220Aという性格の異なる二つのタイプを想定しています。 これらを片チャンネルあたり2個づつ使用した「ダブルウーファー」です。 計算上は、TAD1601bの方を主体としています。 というのは、元々ユニットのfo(最低共振周波数)の高いJBL2220Aの方は、計算上での低音域へ の伸びを見ていると、がっかりする結果がでてくるのです。これは後々、 データを見比べるとなるほどな〜と分かってくると思いますが。。 JBL2220Aだけしか持っていなかったら、 こんな箱を作る勇気が湧かなかったかもしれません。 ここで、制作するのは“2発のウーファーを一つの箱に入れるタイプ”の ダブルウーファーではありますが、 はじめにシングルウーファーでの計算をしています。 シングルウーファーでその傾向を掴んだうえで、 ダブルウーファーにした場合の特徴を加味して設計しています。
箱の容量
大きいに越したことはないと思いますが、ただ単に大きくてもなんの効果もなければ、大きいだけに、、 切ない思いをすることになりかねません。 箱容量の計算には、色々な計算式や、設計文献がありますが、着目点がQocであったり、 focであったり、あるいは、箱の大きさは適当に決めておいて バスレフダクトの調整を 主体にしていたりという具合に、着目点が違うため、それぞれの数値に大きな違いがあります。 なかには、計算が違っている場合もありますし、 絶対にバスレフ効果が望めない計算をしている場合もあります。 特に大きなウーファーを使用したものには、箱が大きくなりすぎる為でしょう、 案外、理想的な箱を作るという記事はないものです。 どれかを信じて、そのまま 作る方法もありますが、同じ間違えるのならば、自分であれこれ、 計算した上で間違えたいと思っています。
TAD1601bのパラメーター
a:16(16.2)cm
fo:28Hz
Qoc:0.31
mo:117g
このデータを元に、計算してみると、
容量(リットル) Qoc foc(Hz) foc×0.7 γ
62 0.70 63.2 44.2 4.09
70 0.67 60.2 42.1 3.62
100 0.58 52.7 36.9 2.54
127 0.54 48.5 33.9 2.00
150 0.51 45.9 32.2 1.69
200 0.47 42.2 29.5 1.27
250 0.44 39.7 27.8 1.01
300 0.42 38.0 26.6 0.85
350 0.41 36.8 25.7 0.72
400 0.40 35.8 25.1 0.63
450 0.39 35.0 24.5 0.56
500 0.38 34.4 24.1 0.51
という数値が出てきます。計算式や端数切り上げ等の違いにより多少違いがありますが、、 バスレフでは、、Qo=0.58のユニットの時、γ=0.5、β=1になる様にする。 あるいはQoc値を0.7になる様に設定して、、と言れていますが、 Qo=0.58のユニットということ自体当てはまる場合は滅多にありません。 TAD1601bの場合、Qo=0.31ではありますが、 この表で、Qocに注目してみると、 Qoc=0.7にする場合、 容量はたったの62リットルになってしまいます。 ユニット自体のfoは28Hzであるのに、この容量の箱に入れたときは、focが約63Hz。 ダクトの共振周波数をその0.7倍に設定したとしても、約44Hzとなり、 ここまでfocが上がってしまうのは勿体ない話ですし、こんな大きなユニットを使うメリットは あまりありません。またγの値も、4.09という大きな値になっていてうまくありません。 Qoc=0.7に、、というのはフラットな周波数特性を求めたものですが、それももともとは、ユニットの Qoが0.58前後の時が理想的という話の場合ですので、Qoが0.32のこのユニットには、あてはまりません。 また、この場合の様なユニットに対して小さな箱では、ダクトサイズもどうしても小さくすることに なってしまいます。そこで今度は,focに注目して考えてみます。
150リットルの箱をみると、62リットルで63Hzあったfocが、一気に46Hzまで落ちますし、 このfoc(46Hz)の0.7倍をダクトのチューニング周波数に設定した場合、 32Hzですので、なかなかいい感じで、大きさを想像してみても、何となく適度な大きさに感じます。 そう感じるのは、38cmユニットを使ったメーカー製のスピーカーがこのあたりの箱のサイズを採用している からでしょう。Qoからみても0.51と、この辺りが臨界制動になりますし、γ値も1.69とまずまずです。 色々な意味で常識的なサイズといえるのですが、そう何度も作るわけにはいかない 大きな工作ですので、もう少し理想を追ってみます。 もっと大きな250リットルの箱では、focが40Hzと150リットルに比べ6Hz下がり、 ダクトのチューニングを0.7倍にした場合は、28Hzと、ユニット自体のfoと同じ周波数になります。 なんだか申し合わせた様な設定です。
さらに100リットル大きな350リットルの箱のfocは、37Hzと、3Hzの低下、
さらに100リットル大きな450リットルの箱のfocは、35Hzで、2Hzの低下、
ついでにもっと大きな 500リットルの箱のfocは、34.4Hzという具合に徐々に、 大きな箱にすればfocが下がるという効果が薄れていきます。こういう点で、 250〜350リットルという数字は、なかなか良い数字です。γの値は、500リットルで、0.5になりますが、ユニットのQocの値が元々、理想値ではありませんので、 この場合、低域のダラ下がり方が大きい可能性もあります。それに、これをダブルウーファーにした場合の 1000リットルという容量は、実現困難です。 ユニットのQoc値が0.3前後の場合γが2〜1が良いという記したデータもありますので、確かめてみると、 γ=2になるのは127リットル、γ=1になるのは250リットルです。散々考えた末に、 γの値とユニット半径の誤差を睨んで、250〜300リットルくらいにしたいと考えました。 また、これをダブルウーファーで考えた場合、500〜600リットルという事になります。 ならば少しでも大きい600リットルにしたいところですが、補強残の容量を引いて、 600リットルの容量を得ようとすると、寸法自体の問題もさる事ながら、一般的な市販の板のサイズで あるサブロク板(1820×920ミリ)から板取した場合、無駄が多すぎました。 この点、500リットル位なら、なんとかなりそうです。また、同じダクトサイズであっても、 ダブルウーファーを一つのキャビネットで使用した場合、一割くらいはその共振周波数が下がりますので、 あまり欲張らず^^;;一つのウーファーあたり250リットル、ダブルウーファーで500リットルを、 製作するにあたっての最小の容量と決めました。それでも、相当大きな物になってしまいますが、 これならば、γの値が0.5になる500リットル箱のシングルウーファーも実験出来るので好都合です。 Qocの値が低い事に目をつむれば、これも理想的な容量の一つ、、あるいは、このユニットを 1つ使ったエンクロージャーとしては最大容量のはずです。
ダクトサイズ
容量を250リットルと決めましたので、foc、 Qoc、γの値は、下記の様に決まります。
TAD1601bを250リットルの箱に入れた場合、
foc=39.74Hz
Qoc=0.44
γ=1.01
この箱に各々、12.5パイ×2個、10パイ×2個のダクトを付けた場合、
以下の表の様になります。
12.5パイ×2(振動板面積の30%)
dl:ダクト長(cm) 24 20 15 10 3(板厚)
fd:共振周波数(Hz) 28.2 29.9 32.5 35.9 43.1
dr/foc 0.71 0.75 0.82 0.90 1.08
β 1.00 0.89 0.75 0.62 0.43
10パイ×2(振動板面積の20%) 13 10 3
fd:共振周波数(Hz) 28.5 30.5 37.7
dr/foc 0.72 0.77 0.95
β 0.98 0.85 0.56
βの値は、ユニットの振動板部分の等価質量に対するダクト部分の空気の質量の比です。 ダクトの容量は、ユニットにとって、背圧、テンションになるイメージとして捉えながらこの表を眺めると、focが約40Hzとなる250リットルバスレフ箱では、ダクトのチューニング値をfoc値の70%である約28Hz(dr/foc=0.71=28.2Hz)で、振動板部分とダクト部分が同じ重さとなるβ=1辺りを限度としたほうがよさそうです。ダクトのチューニング値fdをfoc値の70%以下にしたとしても、値が離れすぎて、周波数特性に大きな谷が出来てしまいますし、βの値が1を越える、つまり、28Hzよりも低いチューニング周波数では、ユニット部分よりもダクト部分の方が重くなりバスレフ効果が薄れていきます。このユニットのfoも28Hzですのでユニットの性能を十分引き出すには良い加減の様です。そこから上の、ダクトのチューニング値がfocの値(39.8Hz)の地点、β=0.5(ユニットに対するダクトの質量の比)の間が基本的な調整範囲と分かります。 さて、普通は、ダクトの直径を適当に決めた上で、ダクト長だけを変化させて、fdを聴感で決めるわけですが、fdの変化よりもダクト径による違いの方が音への影響が大きい気がしてしいました。ここでダクト径まで適当に変えてしまうと捉えどころがなく、何をやっているのか分からなくなります。そこで、ダクトの直径による音の違いを、確かめてみたいと思い、 10パイ×2個のダクトも合わせて計算しています。 12.5パイ×2(振動板面積の30%)の時にダクト長を24cmにした場合と、
10パイ×2(振動板面積の20%)の時にダクト長を13cmにした場合とでは、計算上は、 ほぼ同じfd=約28Hz、β=1になります。また、fd=約30Hzの時は12.5パイで20cm、 10パイで10cmとほぼ同じfd、βですので、これらを聴き比べて、直径の最適な方を選ぶ事にしました。
意匠Design
マルチアンプで駆動する予定ですので、ウーファー専用エンクロージャーとして、 作る事も考えましたが、そうすると延々と弄り続けそうになりそうです。それを避けたい気持ちがあり、 完成した、一つのスピーカーシステムの形態にしたいと考えました。 ネットワークを使用して、マルチアンプと遜色のない音が聴けるのならば、 普通のスピーカーシステムとして使ってもみたい、と思いは様々巡ります。 2インチドライバーに付ける木製ホーンをすでに製作し終えて、これを使用し眺めていると、 思い浮かぶのは、個人的に好きなデザインをしているJBLプロジェクトK2ーS9500でしたが、 どうつじつまを合わせようとしても、容量不足になります。そこで、あこがれのベイシーのシステムを 思いながら、S9500の仮想同軸のコンセプトを組み入れ、さらに十分なバスレフ効果を望んでスケッチを して形になってきたものをみると、結果として、キノシタモニターに似た形状になっていきました。 キノシタモニターをご存じの方は、きっとこれの外観をコピーしたのだろうと思われことでしょうが、 実は、そうではありません。必要なサイズをクリアした上で凝縮。性能に関係する計算は当然満たした上で、ばかばかしくも思えますが、装飾 しなくても、美しくあってほしい。
製作上、合理的で無駄がなくさらに美しい。となれば単純な形にならざるを得えません。結局ただの箱型です。(^^;;
しかし、この箱の縦、横、奥の寸法のバランスには、ヨーロッパの1;1.618の黄金比、日本的バランス、収まり等 の計算、果ては音程の半音ピッチ比まで、と、自分の美的感覚を時間をかけ検討した結果のもので、自分自身が生 涯飽きないよう慎重の上に慎重を重ねて決めました。実は、一朝一夕で割り出せるものではありません。当然、 中の補強の桟の太さ、位置にも意味と美しさがあり、3年も真面目に考えれば同じ位置に同じサイズのものを使わざる を得ない?ものになっています。
接着剤で完全に固めればより良いのは承知していますが、あえて、 バッフル交換だけでなく、順番さえ間違えなければ パーツごとに全部バラすこともできるようにしてあります。これは、将来、もしする必要があれば、もう一度作り直すことなく、 これをベースに手直し出来る様に考えた結果です。それに計算上少なく見積もっても、150kgを楽に越える重量になります。もし固めてしまったら。。
下に、大まかな図面と一部の寸法(mm)を上げてありますが、 元々「mm」ではなく「尺」で考えましたので、この数値は、実際の物とは若干違っています。
500リットルダブルウーファー/4ダクトとして再計算
Qoc:0.44
foc:39.7
γ:1.01
これは、
250リットルシングル時 500リットルダブル時
12.5パイ×2(振動板面積の30%) 12.5パイ×4(振動板面積の30%)
dl:ダクト長(cm) 24 dl:ダクト長(cm) 19
fd:共振周波数(Hz) 28.2 fd:共振周波数(Hz) 28.16
dr/foc 0.71 dr/foc 0.71
β 1.00 β 1.00
この様に、Qoc、foc、γの値は、ユニットを1個から2個に増やすのに伴い容量を単純に2倍にすれば、 シングルウーファーと同じになりますが、ダクトの長さは、同じ共振周波数であっても シングルウーファーに比べ、短くて済むことになります。シングルと同じ長さのままでは、 低い周波数の方にチューニングがずれてしまいますので注意が必要です。
ダクトサイズによる違い
振動板面積の20%辺りは、38センチウーファーの市販品に多いサイズですが、実際に、 視聴した結果は、30%の方が明らかに良い結果でした。低音の抜け、厚み、解放感等、 全てにおいて20%の方を上回っています。これは、箱の容量との兼ね合いもありますので、 容量が小さな箱の場合、20%の方が良い場合もありますし、 設定するダクトの共振周波数によっても変わる事もあるでしょう。 そしてユニットによっても各々向き不向きがありそうです。 今回の箱に1601bを入れた時においては、これが、最適と思いましたが、2220Aにおいては、 もうちょっと大きいダクト径も試してみたい気持ちになっています。 500リットル前後の容量のバスレフ箱で、これらのユニットを使用したダブルウーファーでは、 20%よりも30%の方が良いと報告しますが、どの様な場合にも必ず30%が良いというわけではありません。
ダクトのチューニング
実際には、ダクト長をβ=1以上となる、低すぎると思われる周波数にも設定して、試聴してみました。 結果は、予想どおり、β=1を限度としておいた方が良いという感じでした。 これは、ダクト内の空気を駆動し切れていない印象で、空気抜き程度の役目になっている様です。 試聴の結果から、バスレフポートとして十分に効果を期待したい時には、β=1以下を一つの目安として 良いと考えています。
500リットルの容量の箱において、
ウーファー×2個、
ダクト面積をユニットの振動板面積の30%とし、4個のポートに振り分ける、
という状態で、
TAD1601bでは、たまたまβ=1の時がユニットの持つfo=28Hzにダクトを設定した時と同じになり、 さらにこの箱のFocの70%値になりました。これをその他の設定と聴き比べ、 最適なチューニングとしました。
JBL2220Aにおいては、ダクト長を板厚だけ=3cmにしたとき、目が覚めた様に、 急に伸び伸びと鳴り出しました。その変化は1601bには無かったことでびっくりしました。 このときのβの値は、0.89で、ダクトのチューニング周波数は、約37Hz、focの73%でした。 これは、くしくもユニットのfo=37Hzでした。β=1の時はといえば、ダクトの長さ5.5cmで、 そのときのチューニング値は、約35Hz,focの69%になります。focの70%を考えると、 ダクト長4.9cm、β=0.97。これらの設定は折りに触れ、聴き比べていますが、 それぞれの設定値の範囲自体がダクト長5.5cm〜3cmまでの2.5cmと、近しい為、 その差を見つけられないでいます。まあ、どちらにしても全体の計算誤差を考えれば良好な範囲でしょう。 この計算からすると、2220Aにおいては、ダクト面積をユニットの振動板面積の30%の時にやっと ピンポイント的に調整可能となります。そのダクト長の調整範囲は、たった2.5cmです。20%の径では、板厚の3cmだけの穴でも、 β=1.15、fd=32.8Hz、このfdはすでにfocの64%とチューニング値が低すぎて、 調整しようの無い状態で、ほとんど空気抜きの役目しか果たしていなかったということがわかります。 どちらの場合でも、はっきりしていることは、今回のγ=1辺りに箱の容量をした場合、 β値が1を越えた物、focの70%を大幅に切った物は、バスレフとしては、良くなかったということです。
500リットルシングルウーファー
これもなかなかいけます。密閉で使う場合は、500リットルよりも小さい容量の物よりベ、 良さそうに感じます。バスレフとしても、調整の許容範囲がとても広いので魅力があります。 音の傾向としては、のびのびとした感じで鳴りますが、その反面、ダブルに比べ音の厚みが薄い感じで、 このあたりは、好みの問題、あるいは調整次第でしょう。とはいえ、バスレフ箱としては、 絶対にこの容量が必要だろうか。。と、考えれば、これ以下の箱でも良さそうな「感じ」です。
500リットル4発ウーファー
性懲りもなく、、試してみました。
バッフルにぎりぎり取り付けられるサイズですので、バスレフダクトを開けるスペースが無く、 密閉のみの実験です。見た目は迫力がありますが、どうも品が無く、エンクロージャーの デザインバランスも考え直さないといけません。
この状態では、focが約62Hz、γは1.81にまで上がってしまいますし、 もしダクトを付ける事が出来たとしても、巨大な物を付けない限りβ値を下げられないという 矛盾した事になります。これからも明らかにミスマッチなわけですが、 とてつもなく変な音が出たりするわけではありません。 この辺りがスピーカーの工作の気楽にできる面白さであり、深く追及すると難しいところです。
500リットルダブルウーファーの考え方を元に4発ウーファーを納めるバスレフエンクロージャーの 計算すると、箱容積を倍の1000リットルにして、foc、 Qoc、γの値を同じにして、 後はダクトの調整値を考えるのですが、β値が前よりも大きな値になり、 それにともなってダクト共振周波数が低くなっていきますので注意が必要です。 特に、2220Aにおいては、ユニットの振動板面積30%という数字では、 β値を1に近づけようとしても、板厚を切る様な数字になり物理的に無理な話ですし、 たとえ板厚のみとしてみてもfocの70%を簡単に切ってしまいますので、 もっと大きいダクト穴を開けざるを得ない事になり、バッフルの強度まで考えに入れると頭が 痛いところです。
2220Aでは、直径21cm×4個(i43%)と、もう一つ大きなダクト径で、 やっと板厚の長さ3cmの物で、β=1.00、fd=35.25Hzという数値が得られます。
1601においては、振動板面積の30%のサイズのダクト径(直径17.7cm×4個)のままで長さを 10cmにすれば、β=1.01、でfd=28Hzが得られます。これは計算上、振動板面積に対する ダクト開口面積の%まで現在のダブルウーファーの設計値と、近似ですので、期待が持てます。
最後に
最終的に最適なダクトチューニングとした値は、
TAD1601bの場合、fd=28〜30Hzに対して
2220Aはfd=35〜37Hzと、
数字を見ている限りでは、 TADの方が、最大10Hz近く低域が拡大されているようですが、聴いてみると数字程の差は感じられません。 それどころか2220Aのほうが上回っている感じさえします。 2220Aの方はウーファー領域全体の印象まで変わっています。
今までの印象は、2220Aは、タイトでスピード感はあるが、細身な感触でクラッシックはもう一つ、 1601bの方は、2220Aに比較するとスピード感に劣るが、ふくよかな感じで、ソースを選ばないと いうものでしたが、 今、2220Aはその双方の良さを兼ね備えた音で鳴ってくれています。
これまで無理やりダブルウーファーとして使っていた180リットルのエンクロージャーでは、 どうやってみても、低域への伸びは1601bの方が圧倒的で、2220Aの音の質感の良さは認められても、 箱容量に対応して柔軟に性能を発揮してしまう1601bの方が良いと判断して、それで聴いていました。
500リットルの箱でも、調整値の変化に対して、1601bの方は、敏感に大きく変化する感じは少なく、 結構いい感じで聴けてしまいます。
2220Aにおいては、密閉で聴けば容量が大きいメリットは間違いなく感じますが、 設定のずれた状態のバスレフでは、ムッツリという感じで、 1601bより良くなる“片鱗”すら感じさせてくれませんでした。ところが、 ダクトの調整が、ピンポイント的に、はまった時に2220Aは大きく変化しました。 この大きな変化は、 このユニットの出す音の性格をも表わしている様です。満足して使っている中高音ユニットが、 JBLユニットということもあり、ここにきて、ウーファーも もう2220Aだけで良いと判断して、 1601bを手放しました。
このスピーカーを実現するための力を与えてくださった方々
Tatsuzo Fujisawa
Kazuhiro Kobayashi
Ikuo Shikina
夢の欠片しか見せられなかった、
今は亡きYukio Hisada
に感謝いたします
1999.7.16