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昨今というか、結構前からアルミの障子がある。
時にこれの張り替えを頼まれるのだが。。アルミの枠に張られて入るものは、紙の様に見えて紙でない。
剥がそうとすると「パキッ!」と折れる。
これは、極薄いプラスチックの様な物の間に、薄い紙が挟まれた物だ。
この“紙の様な物”は、丈夫ではあるのだが、結露する。 その結果、下の畳に水が落ちて濡れるので毎日雑巾で拭いているそうだ。 畳も何時も水が付いていれば、良くないに決まっている、そのうち腐る。
紙ならば、結露しない。この紙の様な物ととアルミの地肌の間、接着面には何らかのコーティング材であったり、 糸状の物で接着力を保っている。今回のこれは、どうやら両面テープの様だった。
さて、、強力に接着されたこれを剥がそうとすると、箆かカッターで掻き取るしかないのだが、 気持ちよく引っ掻くとアルミの地肌が出てしまうので、これはまずい。
アルミに水溶性の糊で紙がちゃんと付くわけがない。
しかたないので、このコーティング様の物のツラと紙の物の様な物の間にカッターを差し込んで、 注意深く切り取っていくのだが、、紙の様な物の割れたところは鋭く、気を付けていても手を傷つける。 といっても、これを我慢してアルミ地肌を出さないようにチマチマと根気よく削り取っていくしかない。
慣れてくると、桟が組んである真ん中のところは、ま、なんとかなるのだが、 刃先の動きに制約のある端のところは延々として進まない。。半日やっても、完璧に取れない。取れないといって、プラスチックのカケラを残したままにすると、接着力が得られないので、 なんとか取るしかない。
「これを、きちんと取って紙を張ったとしても、はたして、、 普通の木の障子の様に問題なく付いていてくれるのだろうか。」 という疑問が頭の中を駆け巡り、めげそうになる。
しかし「ま、やるだけやって、そうなった時は、そうなった時だから。。 お客さんにも、それは、しっかり説明してきたわけだし。。」と、 何度も繰り返し考えながらもやり続ける。
それでもそのうち、、「今回うまくいっても一体何回、張り替えられるのだろうか。。」 という疑問が頭をもたげてくる。。
すると、どう考えても、これは、、使い捨ての物としか思えなくなってくる。。
「大体、このアルミ障子は一体いくらなのか。。」
新品の単価がたとえ安いとしても、 度々新しいのに入れ替えるとなれば馬鹿にならない金額だ。この紙の様な物は破れにくいのは確かだが、 破れないわけじゃない。。実際破れたから張り替えているのだが、、今回の物で5年めだという。 ならば、木製の普通の障子は最初は多少高くても、 張り替えは何度も出来るわけで、少し先を見つめれば、かえって安い。 とはいえ、お客さんは、 これの新品にしたいわけじゃない。。紙を張りたいのだ。変な力を入れているので、傷とは別に手首も痛む。。 こうなると、、
「何だ!これは、こんなの障子の様に見えて障子じゃぁない!」 とちょっと、怒ってみたり。。
「最初に表具師が張ったわけではないのだから、本来これは表具師の仕事ではないのだな。」 などと悟ってみても。。
全くはかどらないので、なにも考えないようにして仕事を進める。。休みなく続けても一本をきれいに剥がすのに半日以上かかる、余計な気も使う。 一本だけ持ってきて張り終えるのにまるっと一日。。かといって、 これに見合う金額を請求できるわけもない。。この仕事は、断る方が身のためか。 。と、何時も思いながらも、なにも知らずにそうしたお客さんがかわいそうで、、 同じ物の新品か、木の障子に造り替えなさいなどとは、無下には言えない。
つらい立場です。