|
| ||
新築された家に襖をいれるときには、その家の開口部にいわゆる一品制作で襖を仕立てるので、 当然、「建て合わせ」を行い、ぴったりと収まる襖に仕上げます。
実は、二本並んで立っている襖であっても右と左の襖は全く同じものでは、ないのです。 なぜなら、襖は基本的に直角に出来ていますが、柱の方は、垂直にまっすぐ立っているとは 限らないからです。さらに、柱自体が曲がっている場合もあり、こうなると話は複雑になります。
柱に襖を付けて見て、上あるいは下が5厘(1.5mm)ほどの狂いであれば、襖の下桟を削って右の襖は右の柱に、 左の襖は左の柱に柱付けがぴったりと合うように仕立てます。これを「切り込み」と言っています。 この縁の削り方にも加減と秘伝があります。何年も「すっ」と軽く動き続ける襖には、 それなりの理由があります。
丁寧な仕事あるいは、開口部の寸法を取ってみて狂いの多い場合は、 下地まで出来た段階で、縁を付けていない状態で持っていき、立てる場所にあてがって 「建て合わせ」を行います。 狂いを見越した大きさの下地を作り、実際にこの下地の段階で削ります。 その家にぴったりとはまる様に襖に手を入れれば入れるほど、台形あるいは平行四辺形の下地が 出来上がります。この段階で出来る限り家に合わせた寸法に作り上げます。 うまく出来れば、縁を付けただけで下桟を削らなくても、柱付けは、ぴったりと合うことになりますが、 たとえ正確に出来上がっていても、明仙堂では、建て合わせとは別の理由で鉋を入れます。
もし、最初からそれだけしっかりと作られていたとしても、次の襖の張り替えをするときには 「切り込み」を行うのは、当然であるのです。というのは、新築された家が、 最初の襖の張り替え時期を迎える頃までは、特に家は動きやすいのです。 大工さんの方でもそれを承知して、4本立ちの襖の入る鴨居等は、下がってくるのを見越して、 その中心部を、1分〜2分引き上げてあったりします。数年後にはその分下がって、 真直ぐになるであろうという按配です。
組付けられた柱や、梁が押し合いへし合いしながら、 それぞれ馴染んで収まるのには相当な時間が必要な様ですが、特にその最初の時期は、 激しく意思を主張する様子で、99.9%は、出来上がった直後と寸法が違っています。 ですから、張り替えといえども、切り込みをせずに、ただはめただけで帰ってくることは皆無です。 場合によっては、「切り込み」に半日かかる事もありますし、30分で済むこともあります。 どこまで、ぴったりと家に合わせられるか、快適に動くように納められるか。。 ここが、職人の楽しみであり、また腕の見せ所でもあります。
ちなみに、張替えの時に 時々心配されるのですが、、 家の狂いがひどく、どんなに切り込みに時間がかかっても、 明仙堂では、張替え代金の他に代金をいただくことはございませんのでご安心を。 張替えとは、切り込みも当然することと教わってきましたので、心配されたことの方に 驚きました。それに、 しっかり調整出来れば、次の張り替えの時には、ほとんど切り込みの手間がありませんので、 自分の為でもあるのです。