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和風と洋風の境目 2000.11.18




いわゆる、和風の仕事と思われている仕事を子供の頃から見続けていますと、 世間の人の言う和風と、自分の思う和風とは、どうやら少し「ずれ」があるらしい、、ということには、 薄々気付いていました。

たとえ家の中に洋室が、一つ二つあっても、和風の家であることに変わり無い。 そう言っても、大抵の人は異論が無いと思いますが、たとえば、畳が無く、 床が全てフローリングであっても、「これも和風だ。」と言ったら、どうでしょうか。。

現代和風と言われる様式が、今はありますので、そういう和風もあると言ってくれる人も いてくれるかと思います。さらに、そういう人でも、昔の家では実は畳の部屋が少なかったと言ったら 意外に感じるのではないでしょうか?
ここで、「そう言われれば。。」と思い当たる方は、実際に100年クラスの家にお住みの方か (羨ましいです)、かなり高齢の方か、ぼくと同様なマニアックな方とお見受けします。(笑)

かつて畳の部屋は位の高い部屋であって、床が板の部屋はいくつも存在しましたし、 板戸の数が襖よりも多い家は、これも沢山存在しました。100年程前の家では、 座敷の押入と納戸の押入だけが、襖で、他の仕切は全て板戸あるいは、 座敷と納戸の間が襖という構造のものは結構多いのです。玄関を入って左手の上がりかまちを 見れば板の間。その部屋とその奥の座敷の間は確実に、板戸の場合が多いのです。 下地からしっかりと仕立てられた襖は高価な物ですが、大きな無垢板を使った板戸も高価な物で あったことでしょう。
近年になって急激に畳、襖の割合が増えたと考えてもおかしくありません。

一般に思われている和風は昔からの和風ではなく、どうやら、50年以内の近代和風?の様子です。 ぼくの思っている和風は、それも含んだもっと長い目で見た和風の様で、 この辺に感覚にズレの原因があったわけです。

本物の西洋の建物は、意外と窓が小さいものです。 これは箱の形態をとる構造上、あまり大きな窓を造ると、 強度が不足するという理由からきている場合が多いのです。
それに引き替え、柱造りの日本の建物は、壁を造る前の状態を思い浮かべていただけば 分かるように、元々開いている開口部を壁で塞いで強度を増していく理由で、 開いている開口部自体は案外広いのです。「掃きだし」といわれる床面から引き続いて 外部に繋がる開口部を持っているのも特徴の一つです。
こういう考えで見ていくと、たとえ、 洋風のマンションと銘打たれていたとしても、大きな開口部を備えたサッシが入っていたら、 これはまさしく「掃きだし」であるので、和風といえる。。

ならば、和風とは?そして洋風とは?

結局、
「玄関あるいは土間で、靴を脱いで家の中に入る構造であれば、和風以外の何物でもない。」
こういうことにして、長年の違和感に決着を付けることに致しました。




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