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イタリアのローマ、フィレンツェ、ベネツィア、ミラノと巡ってきて、「街には独自の音がある。」と思った。日本では聞けない音。何々の音ではなくて、録音しにくい音。ドオウモの内部の音、街の路地の音。空気の溜まっている感じ。空気のテンション。暗雑音。暗騒音。街の音が違う。
「石の街だから、街に音を吸うものが少なく長く反射するのさ。」という答えで大まかにはあっているのだが、名古屋の街の中心部もコンクリートだから、同じようになるはずだ。でも実際には、違う。 「コンクリートと石は違うからさ。」と簡単に済ませられる人は、第一、街の音に気付かないだろう。向こうの建物は、一口に「石」と言われるが、よくよく眺めていると、レンガと漆喰が主なのだから、本当は、そういう問題ではない。
とはいえ、石畳というのは、やはり大きな原因であり、音を作る要素でもあるが、やはり、一因でしかなく、実はもっと深いものだと思う。 フィレンツェにはフィレンツェの、ミラノにはミラノの音が出来ているのだ。細く曲がりくねった路地の違い、建物の高さの違い、日本の近代建築のノッペリとしたものとは違い、下から上まで同じデザインではないし、一つの建物で壁の材質まで違っていたりもする。聞くともなく聞いている音に独自の文化を感じる。本当の日本の街の音は、吸収する音なのだと思う。日本家屋に入ると何となく清涼な感じがするのは、この音の具合のせいなのだろう。そして、この雰囲気が日本の文化でもある。遠い国の地で、耳を澄ましながら、日本の街の音を何とか残していきたいものだと、切に思った。