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物の寿命 2000.3.17..3.23改訂



大地に根をはった木は長生きではありますが、いつかは枯れます。 建築、指し物、楽器、になった木は、その伐採された樹齢まで生きると言われますが、 うまくすれば、もしかして、、、もっと長く生きられるかもしれません。

ぼくのスピーカーの木製ホーンは、ボーリング場の床材の端材から生まれました。 ボーリングに行った後には、幸運が待っている様で。。 ボーリング場のゴミ捨て場に捨られていたのを、運良く見つけたぼくは、 これらを拾ってきたのです。

拾ってきた時には、1m弱の長さの物が何十本とありましたが、余った端材は一本だけで、30cmくらい、 本当に無駄なく使用しました。 大小2ペアのウッドホーン。現在使用中の大きい方は、一個13kg。 まだ、仕上げる途中の小さい方は、一個2.5kgで、計31kgです。 削り取られた部分を足せば、35〜40kgくらいは、あったでしょうか。。

あの時、一緒にその現場にいたIが、 「もうそろそろいいよ。十分だよ。」というぼくにお構いなく、 有るだけ積んでしまう勢いで、、これでもか!と、車のトランクに詰め込んでくれたおかげです。 でも、今となっては「有っただけ持ってくればよかった。。」と思っています。そんな事を言うと 「だから、全部積もうとしてたのに〜。」という声が、聞こえて、、いや実際に言われたことがあります。 そう。。実は、ちょっと後悔もしています。

この時の“運良く”は、最初はぼくにとってでありましたが。。 今思えば、 ぼくが「スピーカーを創りたい。」と思っていた時期が、 端材として捨てられた時期とピタリと合ったがために、ぼくの目に止まり、 ホーンとして、生まれ変われたのだ。。とすると、拾われた木もまた、幸運だったのでしょう。 こう考えてくると、、今までずっと “ぼくが見つけた”と思っていましたが、逆に ぼくが、木に見つけられたのかもしれません。 どちらにしても、木の立場になってみて、 確かな事は、これらの端材が、本来の用途に用いられるよりも、 ずっと長生き出来るという事です。

一つの形になったこれらは、オブジェとしても、存在感のある面白い形ですが、 この木の形が、ある機能を持っているというところに、さらに付加価値があります。 その価値を知っている人の近くに在る限り、たとえ人が変わることがあっても、 生き続けていけるのでしょう。

「たかが道具に。。」みたいなことを小さい頃から言われてたりしました。 “物”にこだわってしまうタイプです。 確かに“物”は、人が作った 「たかが道具」ではありますが、 作った人と、持つ人と、その“物”。。。その関係は、結構深いものがあります。 作った人が、たとえどんなに素晴らしい職人であったとしても、 その物が、たとえどんなに素晴らしい物であったとしても 最終的には、持つ人の「見る目」と「気持ち」にかかっています。

「考えすぎだ。。」とも、やはり、よく言われますが、 非常に深い世界を垣間見れる可能性を“物”は秘めています。 たとえそれが、工業製品であっても、設計した人の心意気を感じられる物も あります。そういう事を感じられる人に持ってもらえた“物”は 「やはり幸せだ。」と、自分が趣味で作ったウッドホーンを見ながら、 「職人さん」であるぼくは、今、感じてるわけです。




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