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PLAY BACH 2000.6.25



CAFE TERRACE ”PLAY BACH”は、岡崎の目立たぬ場所にある。
看板の下のほうに、COFFEEそしてLIGHT MUSICと書いてある。
そのLIGHT MUSICという文字が、この店の様子を表わしている。

店の南面にある大きな開口面のガラス窓を右手に見ながら、 程良く植えられた細い幹の広葉樹の間を抜ける店の扉へのアプローチ。 さりげなくお洒落な感じなのだが、なぜか身構えたところが無く、懐かしい感じもする店構えだ。

長年やってる喫茶店によく見られるガラスを格子状にはめ込んだ木製の扉を押して中に入ると、 店内の雰囲気も同様な気配。店の空気が、春の終わりのこの季節に似て、すっとしている。 新緑の中、つっと風が渡る静かな湖をふと思い出したりする。 目の前にレジ。それが置かれているカウンターは左手にのびている。 レジの向こうの棚を見ると、その中段に真空管のプリアンプ。 その下の段に、小さく火の灯ったモノラル真空管パワーアンプが2台置かれているのが見える。 どちらもマッキントッシュの製品である。

入り口から右手方向、東の面の壁の中心には格子状の桟のガラス窓があり、 その手前の床面は壁から手前に1m程、高さ40cm程の段差が作られている。 その作りはタイル煉瓦のしっかりした物で、幅5m程あるその両側の端の方に、 スピーカーが設置されている。まさしくこれはスピーカーのための「ステージ」である。 そこから、手前に置かれている木製のテーブルや椅子は、普通の物よりも高さの低い物で、 聞くまでもなくそういう物をここのマスターは選択したのであろう。 椅子の背もたれ自体の高さも考慮しているであろうその全体に低いシルエットは、 高めの天井と相まって、和の空間を眺める様な視線の広がりを感じることができる。

L字型の構造のこの店は、Lの底辺部にあたる入り口の左手にも、席が設けられているのだが、 久しぶりに訪れたその日もいつもと同じようにスピーカーのある側に座った。

前回来た時までは、JBLのハークネスが音楽を奏でていたが、今回は、 クウォードESLがそのステージに立っていた。コンデンサー型の低く薄い衝立の様な形状の イギリス生まれのそのスピーカーは、普通に置くと少し上向きになっている。 茶系の色のネットで全体が覆われて、細い棒状の足で支えられて立っている独特な姿は、 スピーカーの存在感を希薄にしている。この店には、クウォードの方が合っているのかもしれない。。

いつも、クラッシックがかかっているこの店へ、その日は、クラッシックコンサートの 帰りにまっすぐここに寄ったのであるが、音に全く違和感がない。

「普通なら、ともするときつくなりがちな、バイオリンの音も破綻なく表現しながら、 コントラバスのふわッとした厚みのある音もいい感じだ。。オーケストラ全体、 あるいはティンパニーの鳴った後に音がホールに漂う感じなども滑らかでいい。。 倍音の乗り方がいいのは、前後に音の放出されるこのスピーカーの特徴であるのかもしれないが、 見たところライブな作りのこの建物との相性がいいのも原因かもしれない。」と、 こんなことをつい考えてしまうのは、、いつもの癖。。 酸味を抑えたオリジナルブレンドのホットコーヒーをすすりながら、 そんなことをぼんやりと考えている姿は、傍から見れば割とクール?なはずだが、、 コーヒーと一緒に、手作りケーキをパクついてしまうのも、、いつもの事。。

帰り際、「あのクウォードESL。。いい音出してますねぇ。」とマスターに声をかけると、 ニコリと笑い、「クウォードは嫌な音は出さないですねぇ。」と言った。




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