|
| ||
障子をカーテンと比べて性能が悪いかのごとく、言われる場面に出会うと、辛いのです。 それぞれに一長一短があるということを知っていてほしいと思い、この文章を綴っています。 もちろん、私は障子の味方です。障子のカタをもつのは、仕方のないことです。現在の建築の中で障子は過酷な条件に晒されています。
かつての障子は縁側(廊下)と部屋の間に、仕立てられていました。さらに昔には、外回りが障子と いう時代もありました。どちらにしても、障子の両側に、大きな空間をおいて立てられていました。 今ではサッシのすぐ脇に5センチ程度のすき間で仕立てられる場面が多くなりました。 サッシに引っ付く様に仕立てられた障子に対する、湿潤と乾燥の差は特に過酷な状態にあります。 冬でしたら、サッシが結露するので、その湿気が目に見えます。日差しの強い日はどうでしょう。 さらに、今ではエアコン等の使用で人為的にも、温度の変化は極端なものになっています。 サッシと障子に挟まれた小さなスペースの温度変化はかつての障子が経験していないほど大きなものです。紙は、湿気を吸ったり吐いたりします。その伸び縮みの接点である障子の桟の近くには大きなストレスが かかります。状況によりますが、厚手の障子紙を使用しても最悪で3年位で一部が切れる場合があります。 だったら、破れにくく、汚れにくいビニール加工のものを使えばいいではないかとか、障子をやめて カーテンにしたほうがいいのではという具合には、全くもって、思いません。 その理由の一つはビニール加工のものは「息をしない」からです。「息をしない」というのは、 湿気を取り込んだり 吐き出したりしないということです。それがどういう意味を持っているのかと 申しますと、汚れに密接な関係があると考えるからです。
障子の汚れとはいったい何なのでしょうか。全体に「ムラ無く」色の変わった障子紙は、 張り替えのときに桟に刷毛で水を含ませてしばらく置くと、うまい糊加減のものはすっと紙が取れます。 その取れた紙を見ると、水の染みた後に「しみ」ができています。ここでしみをつくった汚れは、 すなわち小さなチリです。紙はこの非常に細かいチリを選んで湿気とともに、自らの中に取り込んでいる のです。そのまま、水で流してみますと、焼けはもちろん、残りますが、結構きれいに汚れが落ちます。 これは空気を浄化していると考えてもあながち間違いではありません。
ビニール加工の障子紙は汚れにくいと言われる点ですが、確かにビニール側に汚れがついた場合は その通りでしょう。しかし、反対の紙の側は、紙の障子紙と同様です。ビニールコーティングのもの でも汚れ焼けに関しては大差ありません。一点、より気掛かりな点があります。それは、ビニール部分の 結露です。温度差の激しい場所にあるビニール加工の障子では、しばしば、この結露が原因と思われる しみが出来ています。ビニール側は息をしないので、結露します。その水分が、ビニール部についた塵 だけでなく、反対側の紙の塵を巻き込んでムラのあるしみを作ってしまします。そして、結露で出来た水分は、 長い目で見れば、建具や家を痛めます。
障子は断熱効果の点で確実にカーテンを上回ります。単純に隙間を作らないせいでもありますが、 紙事態に断熱効果があるからです。触れないくらいに熱い、または冷たい紙に出会ったことがありますか? また、カーテンは静電気の仕業だと思いますが、大きな埃までが、くっついたりしています。 カーテンをハタハタすると。。。埃っぽいですよね。もともと、障子はカーテンのように埃を溜めません。 そう書くと「ちょっと待て!桟に埃が溜まるじゃないか。」と言われそうですが、実は、風通し良くして いるお宅の障子のには、締め切っているお宅のものより、桟に埃が乗っていません。要するに、 大きな埃は風の動きで、床に落ちて行くのでしょうが・・・。家中の出来る限りの窓を開け放して、風を通して 暮らす。。。生活スタイルに関わってしまいますが、出来れば、良い季節に試して見てください。 これは障子の塵だけの問題でなく、家にとってはいいことです。
紙の障子は、自分のおかれた場所で、せっせと、昔から変わらない仕方でその役目を果たそうとしています。 自分を生み出してくれた国の人たちの今の評価がどうであろうと。そう考えると、とてもけなげです。
張り替えたばかりの、白い障子紙が溜める光を見るといつも、雪の降った朝の清涼感を抱きます。 そのせいか、昔は毎年年末に、障子を張り替えました。今では紙も強くなり、 そこまでの必要はないかと思います。実際に、はやい人で2年、大体3〜5年位で張り替えることが多いです。