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3枚継ぎの板戸 2000.6.25




3尺×6尺(91cm×182cm)大の板戸の無垢の一枚板を見たことがあります。 良いとこ取りする建具のことですから、 この大きさを一枚板で切り出すには、、それはそれは、大きな木だったのでしょう。 こんな一枚物は、まずお目にかかれませんが、 2枚継ぎ、3枚継ぎの物でも、目にする機会は減りました。 こういう物を今作ると、いったいどれくらいの費用が必要なのでしょうか。。

ある日、 「戸が重くて動きが悪いので、軽い襖で作り直してほしい。」という 依頼を受け、見に行くと、ナント!3枚継ぎの板戸。ほー!「これは、なかなかよろしい。」 薄い無垢材で作られた 板戸は現在のベニアの板戸に比べるとずっと軽いのに。。何故重いのか? と調べると、、レールから外れた状態で開け閉めしていた。。 ちゃんとレールに乗せると、軽々と動く。。 「でも、襖の開き戸に替えてほしい。」というお客さんに、 「こういう板戸を今作ると大変ですよ。 考え方にもよりますが、無垢の板戸は、貴重品ですし。。 もちろんそうして欲しいと言われれば襖で新調します。 その場合は、喜んで引き取らせてもらって、 この板戸をバラシて、個人的に、何か作りたいくらいですし。。」 「そんなに、いいのかね。。」 「とても、いいです。」 「じゃあ、このまま使おうか。。」 「えぇ、大切に使ってください。」 「悪いね。。せっかく来てもらったのに。。」 で、帰ってきたことがあります。 「ハイ。」と黙って引き取ってくることもできるのでしょうが。。 どーも、、ねぇ、、性分として、それは出来ません。 いまだに、古いというだけで悪いと思ってしまう人の方が圧倒的に多い様です。 逆に、古い物を良しとする人には、 調整することも しがたい時もあります。 きちっと、調整しなければ(削るところは削らなければ) その物の寿命を縮めることになります。 単なる骨董品なら、遠巻きにそっと愛でれば良いのですが、 道具である限り調整は必須です。

国産桧と、米桧では、日本で使用すると、 国産桧は、暖かい茶色に変っていきますが、 米桧は長年の間に色が黒くなっていきます。 米桧自体がそういう物なのか、 米桧が育った環境と違う日本の気候のせいでそうなるのか。。 いわゆる建築で使う外国材は一様に色が黒ずんでいきます。 黒くなるといっても、煤で燻された感じとは違い、、汚い感じです。 これは国産の杉と、外国産の杉でも同様の事が起きます。 時が過ぎれば、一目瞭然です。 触れてみると、木肌が国産の方が木目細かい感じもします。 木の育った場所の気候は、木の質に大きく影響しますし、 その使われる場所は、育った場所に近いのが良い というのは先人達の常識でした。。 さらに、山の南の面から採れた木は、家の南、北の面の物は家の北側。 一本の木でいえば、南側は、南に、北は北に。。これもかつての常識。 現代は、そんな事は無視して、見栄えの良い方を人が見る方にするのが 常識になってる様です。。

自分の仕事に思いを巡らせても、 理想を追えばキリがありません。
しかし、 一人の作り手が、同じ技術で、同じ物を作れば、 ある程度の材質の違いは補える。。と信じています。
「材質と技術、出来るだけ高いレベルでの、 その“加減”のいい妥協点は。。」いつも考えるところです。




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